不透明な東芝メモリの売却

東芝の2017年3月末の債務超過額は「マイナス1500億円」です。

1兆5000億円の半導体事業を売却すれば、十分債務超過から脱することができるように思われるのですが、何故さらに事業の売却を急ぐのでしょうか。

半導体事業の売却益を1兆円としましても、債務超過が1500億円ならば、差し引き8500億円の余裕がある。

にも拘わらず更に事業の売却を進めています。

東芝のグループ会社は上場企業で7社あり、そのうちの1社である東芝機械を2%の株式を残してすべて売却しています。

このグラフでは東芝機械は「165億円」ですが、実際の売却額は「153億円」であり、売却益は「55億円」です。

東芝、東芝機械株を売却 売却益は55億円 ロイター

東芝(6502.T)は3日、東芝機械(6104.T)株18.1%を売却したと発表した。

売却額は153億円で、売却益(税引き前)は55億円。

東芝は東芝機械の発行株20.1%を保有していたが、今回の売却に伴い持ち分法適用関連会社から外れる。

東芝の7つのグループ企業のうち上場企業の一つを失ったわけです。

東芝の保有する上場企業は、これで6社となります。

東芝機械、グループ離脱 社長「非常に残念」 日経

1938年の創業以来、東芝グループの中核だった名門は、経営危機に陥った親会社の資産売却で、「スタンドアローン(単独)」での再出発を余儀なくされる。

「東芝グループを出たくて出るわけではない。非常に残念だ」

更に東芝テックまで売却候補として上げており、これを売りますと上場グループ会社は7社から5社になります。

2月14日の東芝の会見で減損処理は必要ないと明言していたランディス・ギアも売却検討です。

東芝、傘下ランディス・ギアの売却検討 20億ドル規模=関係筋 ロイター

東芝(6502.T)が傘下のスマートメーター(次世代電力計)大手ランディス・ギアを売却する方向で準備を進めていることが、関係筋の話で分かった。

売却額は20億ドルに上る可能性があり、米原発事業の減損で傷んだ財務の立て直しを急ぐ。

売却額は2000億円超であり、半導体事業の売却だけでは損失の穴埋めができないとしか捉えようがない。

ならばまだ隠している巨額損失があるのでしょうか?

半導体事業の100%の売却だけで十分、債務超過から脱するように見えるのですが・・・

東芝はランディス・ギアを2011年に23億ドルで買収していますが、売却額は20億ドルです。

ランディス・ギアの株主構成は、東芝が「60%」、官民ファンドの産業革新機構が「40%」です。

これの売却を検討しています。

更に東芝は原発事業における巨額損失の原因となっているウェスティング・ハウスの破産法適用まで視野に入れており、この場合の損失額まで試算しています。

ウエスチングハウス破産法適用 東芝3000億円弱の損失と試算 Newsweek

東芝<6502.T>が米国の原子力事業子会社、ウエスチングハウス(WH)について、米国の連邦破産法11条を適用した場合、新たに連結決算に3000億円弱の損失が生じる可能性があると試算していることが1日、分かった。

破産法を申請するかどうかを慎重に見極める。

社内には、原発事業に関連した部門から、破産法適用に否定的な声も出ている。

破産法適用を決断した場合、7000億円超の減損損失に加え、3000億円弱の損失が加わることになる。

東芝はWHに対して8000億円の債務保証を行っているが、今回の影響額調査では、将来の損害賠償請求などは含まれておらず、実際の損失額はさらに拡大する恐れも残っている。

現時点では減損損失は7125億円ですが、これは監査法人のレヴューを受けておらず、PwCあらた(プライス・ウォーター・ハウス・クーパース)のレヴューを受ければ、更に損失が拡大していくかもしれないと見られています。

ウェスティングハウスのチャプター・イレブン適用による損失は3000億円弱ですが、これには8000億円の債務保証は含まれていません。

単純計算しますとウェスティングハウスだけで「1兆1000億円」の損失となります。

減損損失7125億円を含めますと「1兆8125億円」です。

8000億円規模の銀行借り入れもあり、社債も600億円償還しなければなりません。

これを足しますと「1兆8125億円+8000億円+600億円=2兆6725億円」です。

東芝の7つの上場企業をすべて売却しても2400億円弱ほどにしかならず、保有株式をすべて売却しても500億円に満たない。

またたとえウェスティングハウスを切り離しても債務保証の8000億円からは逃れられません。

またイギリスと中国の原発における偶発債務の全容も分からない。

まだ隠している爆弾があるのかもしれません。

だから売却を急いでいる。

半導体事業の趨勢も、結局はウェスタン・デジタルが握っています。

東芝の半導体売却の成否は“拒否権”を持つ米提携先が握る 週刊ダイヤモンド

ここで鍵を握るのが、東芝とフラッシュメモリーの共同生産で提携するWDの「拒否条項」。

関係者によると、両社の提携契約には、一方が他社の資本を入れる場合、その出資を拒否できる条項が盛り込まれているという。

東芝と共同運営する生産拠点の四日市工場に対してWDは、2002~16年の間に累計1.2兆円もの巨費を投じてきた。

あるWD関係者は「四日市工場の運営に競合が入ればオペレーションは大混乱する」と、マイクロンとハイニックスを拒否する姿勢だ。

なるべく早期に東芝メモリ(半導体事業)を売却したい東芝としては、独占禁止法審査に時間のかかる競合他社は避けたい。

東芝は投資ファンドに売却したいわけですが、そのファンドが中国や韓国企業という他社に転売してもらっても困る。

他国への技術の流失となり、それは避けたい。

転売しないことを条件に投資ファンドに売却したい意向のようです。

しかしてそれでも拒否権を握るウェスタンデジタルが拒否権を行使すれば、売却もできない。

ならば最終的にはウェスタンデジタルが、買収することになりそうですが、交渉次第なのでしょう。

ウェスタンデジタルに売却すれば、すべてが取り込まれると東芝は恐れています。

独立志向の強い東芝の半導体部門からは「WDの傘下に入れば全て取り込まれてしまう」と警戒する声も漏れる。

この結果消去法的な選択で残る現時点での有力候補は「投資ファンド」(同)しかない。

だが、その選択にも「拒否権」を携えたWDが目を光らせる。

東芝のメモリー事業の売却に至るパズルは複雑さを増している。

何とも複雑そうな話です。

拒否権がどういった内容なのか分かりませんが、これですとウェスタンデジタルが、東芝メモリの売却価格の決定権を握っているように見えます。

もし競合他社が高い価格を提示したとしても、それを拒否することができるわけですから、結局はウェスタンデジタルが決めた価格でしか売ることができない。

となればなるべく安い価格で購入しようとするはずであり、1兆5000億円で売却できるかどうかも判然としない。

東芝メモリの売却価格も東芝の思う通りの価格で売却できるわけでもなさそうです。

東芝メモリの問題も不透明さを増しています。

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