原油価格は「より長期にわたって下落する」

出光興産が上期初の赤字です。

原油安が直撃しています。

出光の4~9月、最終赤字70億円 原油安で評価損 日経

出光興産は20日、2015年4~9月期の連結最終損益が70億円の赤字(前年同期は187億円の黒字)になったと発表した。

原油価格が想定を下回って推移し、在庫評価損380億円が生じた。

4~9月期のドバイ原油価格を1バレル60ドルと想定したが、夏場以降、価格が急落。

原油安が続けば在庫評価損が膨らみそうだ。さらに資源開発事業で追加の減損損失が生じる可能性もあり、2期連続の最終赤字となる公算が大きい。

アジア市場における原油価格の指標は中東産ドバイ原油です。

今年1月に40ドル台であったドバイ原油は、2月以降持ち直し、50ドル台から60ドル台へと上昇していたのですが、7月以降急落していきます。

ドバイ原油価格の推移(月次) (世界経済のネタ帳)

ソース

東商取原油先物ドル換算参考価格

2014年度決算において石油元売り各社は軒並み赤字に転落していましたが、2015年度も引き続き原油安から厳しい決算が継続しそうです。

確か石油元売り会社は70日間の備蓄を義務付けられていたのではなかったでしょうか。

原油の供給過剰のデフレが収束するには、数か月ではなく、数年はかかる見通しです。

原油価格、予想より長期にわたり下落か-先物市場全体が安い ブルームバーグ

世界の原油市場の供給過剰は解決までに数カ月というより数年間を要する問題であるとの見方が強まっている。

5年後に受け渡しとなる米国の原油先物価格は金融危機時の水準を下回っている。

石油輸出国機構(OPEC)の主要加盟国の産油量が過去最高水準に達する中、加盟国以外からの供給も継続し、イランの輸出再開が近づいており、供給過剰は続くことが示唆されている

世界的な供給過剰を背景に、石油各社は既に原油価格下落が続くとの見方を示している。

英・オランダ系ロイヤル・ダッチ・シェルは30日、同社が「長引く下落」に備えていると説明。

英BPのボブ・ダドリー最高経営責任者(CEO)も原油価格は「より長期にわたって下落する」との見通しを示している。

石油各社は原油価格の長期にわたる下落に備えているそうです。

1バレル45ドル台で、なお下がるというのでしょうか。

金融危機が来ると言っているように聞こえます。

30ドル台になりますと、どう見てもシェール企業の危機が表面化します。

WTI原油が一時37ドル台をつけた時がありますが、すぐに40ドル台に戻して事なきを得ましたが、これ以上「下落」するのはさすがにまずいのではないか。

ウォール街の銀行も石油関連の貸倒引当金を積み増しているようです。

ウォール街の銀行、石油関連融資の劣化カバーに向け現金積み増す ブルームバーグ

米石油ブームを融資によって支えたウォール街の銀行は、原油価格の「より長期にわたる下落」に備えエネルギー関連の損失をカバーするために確保する現金を増やしている。

JPモルガン・チェースは13日、石油・ガス関連の貸倒引当金を7-9月に1億6000万ドル(約190億円)積み増したことを明らかにした。

融資先の一部の石油・ガス企業の財務状況悪化によりバンク・オブ・アメリカ(BOA)のリスクのある融資は前年同期比で15%増加。

米ウェルズ・ファーゴはエネルギーセクターの潜在的な損失をカバーするため現金を積み増したと報告した。

制裁解除後のイラン産原油も供給されてきますので、景気後退から生じる原油需要の減退も重なって原油価格を押し下げる圧力となっています。

この供給と需要のバランスは、数か月では修正不可能であり、数年がかりのものだそうです。

つまり数年間、原油価格は長期的に下落していくと市場は見ていることになります。

バレル40ドル台で、既にサウジアラビアは悲鳴を上げています。

サウジで政府契約業者への支払いに遅れ、原油安で-関係者 (1) ブルームバーグ

原油価格下落の影響で2009年以来の財政赤字に陥っているサウジアラビアは、政府の契約業者への支払いを遅らせている。

サウジ政府が資金保全に努める中で、インフラプロジェクトを受注した企業が支払いを6カ月以上待たされている。

支払いの遅延は今年に入って増えており、政府は契約価格からの値引きを求め再交渉にも動いているという。

原油が収入全体の約80%を占めるサウジは価格下落に対応し、外貨準備の取り崩しや支出削減、債券発行を余儀なくされている。

原油価格の下落で収入が減り、財政赤字となり、外貨準備を取り崩したり、債券を発行したり、支出を削減しているとあります。

企業でも給料の支払いが遅延してきますと、その企業は危ないと言われますが、サウジも契約業者への支払いが遅延していると暴露されています。

かなり苦しい台所事情と思われますが、これ以上原油価格が下がりますと、悲鳴では済まなくなるかもしれません。

サウジアラビアとシェール企業とのチキンレースに見えるわけですが、価格決定権を失いたくないのでしょう。

シェール企業がつぶれるのが先か、サウジがつぶれるのが先か。

バレル30ドル台の領域になれば、おのずと答えは出るでしょう。

減産して原油価格を上げればいいのにとも思いますが、そういった状況でもなさそうです。

サウジは去年の9月から今までの「生産調整」から原油の「価格競争」に政策を転換したからです。

シェール産業に価格競争を仕掛けた。

サウジの原油在庫、記録的高水準に増加-市場シェア維持目指す中 ブルームバーグ

世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの原油在庫が記録的な高水準となっている。

輸出を削減する一方で、市場シェア維持を目指しているためだ。

「石油輸出国機構(OPEC)の多くの国々が割安かつサウジ産を下回る価格で原油を売却し、市場での競争が激化しつつあるのを考えればサウジ産原油輸出が減少するのは当然だ」

サウジを中心とするOPEC加盟国は市場シェアを守るため生産を増やしており、価格押し上げに向けて減産を実施する従来の役割を放棄している。

欧州・アジア向けには価格を上げたにもかかわらず、アメリカ向けには価格を下げている。

シェール企業との価格競争がきっかけであり、どちらかがつぶれるか、妥協点を見つけるまで原油価格の下落は続きそうです。

価格競争によって生産調整を止め、減産の役割を放棄しているとありますから、原油価格が上がるわけありません。

OPEC各国がそれぞれ市場シェアを確保するため生産量を増加させ、原油の価格競争をしているためにより安い原油への需要が増加して価格下落圧力となっている。

価格競争に負けますと在庫が増え、輸出が減り、市場も奪われ、今のサウジのようになる。

市場を奪い返すためには、更に安い原油を生産しなければならない。

減産して価格を上げますと安い原油の方を選択され、市場を奪われるということだと思います。

ウォール街の作ったシェール革命が引き起こした価格競争です。

では今後の見通しはどうなるのでしょう。

OPEC、来年の原油需要予想引き上げ=月報 ロイター

この記事を見ますと、

1 OPEC産原油への需要は19万バレル増加する。

2 2016年の世界の原油需要の伸び(1日あたり)は、146万バレルから129万バレルに縮小する。

3 OPEC非加盟国の供給は大幅に減少する。

4 米国産シェールオイルの供給量は減少する。

5 OPEC加盟国の供給量だけが増加していく。

OPEC以外の非加盟国やシェールオイルの供給量は減少するが、OPEC加盟国の原油だけは供給量が増加していく。

1日あたり123万バレルの供給過剰になると言っています。

生産調整を放棄し、価格競争をしているわけですから原油価格は今後も低下していきそうです。

国際エネルギー機関も同じ見通しです。

石油の供給過剰は2016年も続く、需要の伸び鈍化で-IEA ブルームバーグ

世界の石油市場は来年も供給過剰の状態が続くと、国際エネルギー機関(IEA)が予想した。

価格下落への対応で石油輸出国機構(OPEC)以外からの供給は2016年に落ち込むものの、世界経済見通しが弱まることで需要の伸びは今年記録の5年ぶり高水準から鈍化するとして、原油の供給過剰は続くと予想。

需要は減少し、供給は過剰に増加していく。

来年も原油価格は下落を続けそうです。

ならばバレル30ドル台に踏み込むということでしょうか。

あるいは今の45ドルから半減して20ドル台を伺うことになるのでしょうか。

もしこういった方向が既定路線と言うならば、来年の金融危機は避けられないかもしれません。

もう一度、金融危機が起こりますと金融システムはクラッシュし、中央銀行は対応できず、下手をすれば世界経済が崩壊するかもしれません。

・・まったく、おだやかでないねぇ

利潤を追っている資本主義を、このまま続けさせるわけにもいかないでしょうから、それも仕方がないことかもしれません。

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コメント

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