経済

転がる死体

世界貿易が低体温症です。

バルチック海運指数 ブルームバーグ

昨日より「20ポイント」低下し、「579ポイント」を付けています。

これは2007年~2009年までのバルチック海運指数の推移です。

ソース

2008年9月のリーマン・ショック前、2008年5月20日に最高値「1万1793ポイント」を付けていたバルチック海運指数は、リーマン・ショック後の2008年12月5日に「663ポイント」まで急落しています。

それ以後はボックス圏相場になりますが、2012年からのバルチック海運指数は以下です。

ソース

大体「600ポイント~1000ポイント」のボックス圏で推移しています。

バルチック海運指数(BDI)が、1985年1月の統計開始以来、歴史上最低値を付けたのが、実は今年の2月18日でした。

2月18日に「509ポイント」の最低値をつけています。

バルチック海運指数=02/18時点= 6営業日続落で最低更新

本日の「579ポイント」から「70ポイント」しか差がありません。

世界の貿易量が停滞しているということですが、「509ポイント」を割るかどうかが注目点です。

世界全体の貿易量が改善している場合、この指数は上がり、悪化している場合、この指数は下がると言われています。

通常、景気が良い時には金融を引き締め、景気が悪い時には金融を緩和します。

欧米日の先進三か国が、共にゼロ金利政策を取り、金融緩和をしているということは世界全体の景気は悪いということです。

景気が悪い時には通常、金融を緩和するわけです。

なのにアメリカは強がって金利を上げると言っているわけです。

景気が悪いのに金利を上げて、引き締めると言っているわけです。

世界経済の牽引役であった中国も景気が減速しています。

原油安が続けば、中東諸国の財政も厳しくなってきます。

海外の景気動向に敏感なアメリカのキャタピラー社もよくありません。

原油価格もWTIが「41ドル台」をつけ、バレル40ドルを割るかどうかの瀬戸際にあります。

何とか買い支えて40ドル台を死守せんとする動きがあるように見えます。

1バレル40ドルを割り、バレル30ドル台が普通になれば、薄氷が割れるでしょう。

既に1バレル40ドル台前半でこれです。

米エネルギー4社、破綻懸念 原油安長期化でデフォルト危機 SankeiBiz

原油の安値が11カ月にわたって続いているため、米エネルギー業界ではさらに多くの企業が破綻に追い込まれる恐れがある。

ペン・バージニアやパラゴン・オフショア、マグナム・ハンター・リソーシズ、エメラルド・オイルの4社は今週、監査人がこれらの企業の事業継続能力について疑問を呈したことを明らかにした。

4社の債務は合計約48億ドル(約5900億円)。

4社は原油価格下落により資金調達が困難になっていると説明した。

モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなどは、エネルギー価格が近く回復することはないと予想している。

1社辺り平均して「12億ドル」の債務ですね。

原油安で資金調達が困難になっているそうです。

しかも原油価格が近く回復することはないそうです。

ならば原油価格は下落していくと見ているわけであり、下落していけば破綻の連鎖が現実化してくる。

グレンコアのような大企業も倒産するかもしれません。

すれば世界経済はどうなるのか。

なのにアメリカは利上げをするそうです。

事実、記事はこう続きます。

エネルギー業界が破綻の大波に見舞われる可能性が高まっている。

バークレイズのアナリストらは、これによって投機的格付け企業のデフォルト(債務不履行)率が来年、2倍に上昇すると予想している。

社債が高利回りのエネルギー企業の累積デフォルト率は向こう2~3年間に最大25%に上昇するとの見通しを示した。

日本の専門家は今年の6月、原油価格は年末12月にかけてWTIで「64ドルか65ドル」、ブレント原油で「68ドル」に上昇すると見ていました。

セントラル・バンク日銀も、今年後半の原油価格をバレル60ドル以上になると予想して金融政策を決定していました。

でも現実はどうであったか?

ドル高で原油価格は

後、ひと月と半でWTIが「65ドル」に上昇するとは思えません。

産油国が減産をせず、シェア争いをし、来年の1月にはイランの制裁も解除されてイラン産原油が大量に供給されてくるからです。

EU:対イラン経済制裁解除準備 来年1月にも

ソース

イランは原油埋蔵量「世界第4位」、天然ガス埋蔵量は「世界第1位」の資源大国です。

これまでは欧米諸国の制裁によって制約されてきたわけです。

この大量の資源が世界に供給されてきます。

当然、原油価格の下落圧力となるでしょう。

イランは制裁解除直後に「50万b/d(バレル・パー・デイ)」、6か月後には「80万b/dから100万b/d以上」、生産を増加するとしており、世界全体では200万b/dの供給過剰状況にあります。

この供給過剰状態に、更にイラン産原油が加わります。

これを見ますとイランでは2014年、1日辺り「361万4000バレル」を生産していたことが分かります。

現状の生産量は「280万b/d」ですが、そのうち輸出量は「130万b/d」程度であり、制裁前は「220万b/d」でした。

制裁解除後は、このように威勢の良いことを主張しています。

イラン、「日量600万バレルの原油を輸出する用意あり」

「石油の雄」サウジアラビアが1000万b/dほどです。

凄い量ですね。

来年以降、世界にこの膨大なイラン産原油が供給されてきます。

こういった状況を見ますと、原油価格がそう簡単に上昇していくとは思えないわけです。

もともとイランには「400万b/d」の生産能力があるそうです。

シェール革命がもたらす「バラ色の未来」は終わったのかもしれません。

イラン制裁解除は、世界に衝撃をもたらし、もはや原油価格が高値をつけることはなくなるでしょう。

庶民にとってはガソリン代は安くなるは、灯油も安くなるはでいいのですが、世界経済にとってはいいことかどうかは分かりません。

原油価格の長期的下落は、何かの「引き金」を引くでしょう。

銃でも一旦、トリガーが引かれますと、その後は地面に何かの死体が転がっている。

その転がっている死体は、古い世界の死体かもしれません。

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コメント

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